そう、ただの犬です。
これを書く私は、言うまでもなく人間です。
夏央の飼い主です。
どうして、私が飼い主となり、夏央がペットとなったのか。
生まれて間もないかわいい子犬をペットショップで見そめたからです。
ただ、それだけです。
ただ、そのときから、私は夏央の飼い主となり、夏央は私に飼われる犬になりました。
縁とか巡り合わせとか、たくさんの因縁がぐっちゃぐっちゃに絡まってつなぎ合わせられて、今、見えているのが因果の「果」なのだろうけど、そんなことはともかくです。
ともかく、私と夏央は、今、一緒に生きています。
たくさんいる人と犬の中で、どうしてこの組み合わせになったかなんてどうでもいい。
そんなことは知るよしもないし、仮に知れたところで「ふーん、そーなんだー」程度です。
そんなことより大事なのは、今とこれから。
「よしっ、夏央、散歩行こう!フェッチしよう!」です。
「わんっ!」です。
「ごはんだよ!」です。
「ふうう゛ーんっ!」です。
「フセ!」です。
しーん・・・
「聞こえませーん」です。
そう、最近の夏央は、フセをしなくなりました。
基本、言うことをよく聞くいいこです。
ただ、お家の中でボール遊びをするときだけ、「フセはやだ〜」オーラを出すようになりました。
理由はボールを独り占めできないから。
このボール遊び、夏央と冬湖で一個のボールを争います。
当然、身体・運動能力に優れた夏央は、ボール投げれば全部キャッチングしちゃいます。
だから、かわりばんこの公平さを保とうとすると、冬湖の番の時に夏央にフセて待ってもらって、冬湖に取らせてあげる工夫をするわけです。
夏央、最近、ようやくこのからくりに気がつきました。
自分が言うことを聞いても良いことない。憂き目を見る。
「そんなのやだやだ、ボールはせーんぶ夏央のもの!」
「フセ」と号令をかけてそれに反抗するときの夏央の表情がじつにいじらしい。
「本当は、飼い主さんの指示を無視するなんてとっても心苦しいんですよ、でもね、夏央は、ボールが大好きなんです」
と言わんばかりに、潤んだ瞳を大きく開いて、無垢な視線をまっすぐにくれます。
その切実さ、あるいは誠実さを如実に示すじつに綺麗なオスワリポーズ。
鼻先はいつも以上に高く上に向きます。
犬は、飼い主に抗っては生きていけないことを遠い昔からその血に叩き込まれているはず。
それでも、なお、夏央が見せるささやかな反抗。
とってもかわいい夏央の反抗。
なにか事件事故があって、不測の事態があって、夏央の飼い主がほかの人になったとしても、それなりの人と犬の関係にはなるだろうけれど、でも、まだ短いもののこれまでにつくったこの関係は、ほかの人にはもう築き得ません。
まぁ、いいさ、ボールくらいあげるよ。
けど、夏央の人生はぜんぶ丸ごと引き受けた。
夏央は、人間に寄り添えるなら、どんな態勢でも寝られます。 |
夏央は、狭いところが好きで、人間とソファ背もたれの間などによく挟まります。 |
こちらは、冬湖。 冬湖の頭頂部。 冬湖は、ポケットの中が好き。というか、ポケットに顔を突っ込むのが好き。 この写真では、こっち→向きに突っ込んでます。 |
引きで撮るとこんな感じ。 今度はあっち←向きに突っ込んでます。 人間のパーカー左ポケットから冬湖の左目尻がかすかに見えます。 |